隣の妹の部屋から楽しそうな声が聞こえてくる
妹が彼氏と電話で話している
早くエアコンのリモコンを見つけなさいと2名の方から連絡をいただきました
僕は探さないつもりです
ちなみに扇風機もつけていません
僕の暑さ対策は水を飲むこと、シャワーを浴びること、窓を開けること
そして部屋のドアを開けておくことです
なぜエアコンのリモコンを探さないのか?
僕の部屋には北に大きな窓、西に小さな窓、そして東にドアがある
二つの窓を開けておくだけではほとんど風は流れない
そこで東のドアを開けっ放しにする
ドアを開けっ放しにするというのは僕にとってもはじめての試みだし、実はこの家にとっても画期的な試みである
我が家の構造ももはや文明的である
というのは家族一人一人が個室を持っていてそれには扉が付いている(簡易な鍵も付いてい)
出入り以外それぞれの扉は閉じられている
僕の部屋の扉も例外ではなかった
今年の梅雨があけるまでは
それぞれは廊下で接続されている
僕は扉を開け放つことで自分の個室を廊下と常時接続した
廊下はパブリックの空間で誰のものでもあるが誰のものでもない
そこに僕は自分の部屋を接続した
自分の部屋とパブリックな空間の境界をあいまいにしてみた
僕の部屋がある階には妹と父の部屋がある
境界をあいまいにしたために僕は気を遣わないといけないことが増えた
ラジオの音量とか独り言の大きさとか
部屋をよく掃除するとか
オナニーをするときだけは扉を閉めるとか
いずれにしても外とのつながりを常に意識しないといけなくなった
これもひとつの家族との関係性を揺さぶるとてもささやかな消極的しかし能動的な仕掛けである
僕がちいさいころはエアコンなんて家にも学校にもなかった
電車に乗ろうとすると3本に1本エアコンが入っていてそれに当たると歓声をあげていた
妹の電話の話し声
父の咳払い
ハイヒールがアスファルトを叩く
マイケルのシャウト
時間的にも空間的にも多様な関係性のなかで僕が定義されていると常に胸に刻むため僕はエアコンをつけない
エアコンをつけるのは簡単すぎてつまらない
ベッドのなかからiPhoneと外付けキーボードで書きました
なかなか良いです
かすかな空気の流れを感じながら